105MIXのタロが、新しい家族に迎え入れられました。
タロは104ロッタと一緒にセンターに収容されていました。 いや正確には10数頭の仲間と一緒に収容されたのでした。
いわゆる多頭崩壊でした。 無責任な飼い主による放漫飼育の果て、2頭の雌雄が数年で10数頭に増えました。多くは近親交配の結果です。 狭い居住空間での密集多頭飼育。 犬たちは1歩も外に出たことがなかったといいます。 たった1人の人間と10数頭の犬が、閉ざされた空間で暮らしている状態を想像してみてください。犬たちには、そこが世界のすべてでした。
この異常な飼育環境は、見えない傷を犬たちに残しました。
タロたちと一緒に放棄された仲間の5頭を保護した団体があります。 ある機会に、その団体の代表者の方と話して分かったのは、どの子も共通の問題を抱えているという胸ふさがれる事実でした。
この子たちは「孤独」を恐れます。「外界」を恐れます。 タロもロッタも知らない場所に連れていかれたり、知らない人に抱かれたりするとガタガタと全身を震わせます。 独りで(ケージなどに)置き去りにされるとパニックに陥ることがあります。
幸い、タロとロッタはまだ若く、タロには天性とも思える進取の気性が備わっていました。 どんなことにも力いっぱい生きています。 彼にとっての困難を、ひとつひとつ、乗り越えていきました。
タロ(手前)とロッタ
新しい飼い主さんは、こうしたタロのトラウマをよく知ったうえで、「うちの子がいちばんかわいい」と愛情を惜しみなく注ぎ、いろいろな経験を積ませてくださっています。 経験と時間をへて、タロに備わった無数の蕾(つぼみ)がゆっくりと開いていくに違いありません。咲き誇る春を迎えるのも間近でしょう。(C)
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2009年03月25日(水)
No.78
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